前回に引き続き、都道府県別に多民族化の度合いを計る試みを行います。
外国人比率と外国人人口のなかでの定住者の割合の二つの指標から各都道府県の多民族化の度合いを計ろうとしたのが下の図です。
この図のおもしろい見方は、横軸の外国人比率を基準に、縦方向に着目してみてみることです。すると、外国人比率が同じくらいの都道府県でも、定住者(身分系ビザ所持者)の割合が大きく異なることがよくわかります。縦方向に着目すると、都道府県は以下の図のように、4つに分類できそうです。
まずは東京です(図の1番)。外国人比率は最大ですが、定住者の割合は多くはありません。日本最大の都市なので、様々な職業が存在するために職業系ビザ所持者の割合が高いのでしょう。
次に、愛知、大阪など5府県を含むグループです(図の2番)。このグループは、外国人比率も定住者の割合も似通っているのが特徴的です。
ただし、産業構造でいうと、工業が盛んな地域が多いなか、大都市を抱える大阪だけがやや異質です。これは身分系ビザをもつ在日コリアンの多さが効いていると思われます。
3番目のグループは外国人比率が2%を超えて比較的高めの都道府県が含まれます。図を見ると、福井と神奈川の間でさらに分けられそうです。
定住者割合が低い下のほうのグループには東京圏の県が多く含まれますが、東京の場合と同じく、やはり職業系ビザ所持者の割合が高いことが原因でしょう。
上の方のグループはそれぞれ事情が異なりますが、静岡と滋賀は身分系ビザをもつ日系人が多いこと、兵庫は在日コリアンが多いことが指摘できるでしょう。
最後の4番目のグループではまず島根と和歌山の定住者率の多さが目を引きます。島根は日系人が多いことが原因でしょう。
下の方を見ていくと新潟と沖縄の間でさらにグループ分けできそうです。上下どちらのグループにもこれといった共通の特徴は見いだせませんが、強いていえば北海道や九州など国土の周縁部では定住者の割合が低いことが指摘できます。
とはいえ東北地方は比較的定住者の多い山形・福島・秋田と比較的少ない岩手・青森に分かれているようで、この点は興味深いところです。
ただし、このグループでは総人口や外国人人口自体が少ないため、少しの値の変化で割合が左右されてしまうことに注意が必要です。
次回は、定住者の割合に着目することがどのような社会的文脈において重要なのか、社会学の研究などを引きつつお話したいと思います。(つづく)
(文責:佐藤慧)
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