近年、団地(公団住宅、UR住宅)というと若者に人気がなく、高齢化が進む一方というイメージで語られることが多いと思います。昭和の時代にファミリー層向けに作られ、当時は賑わっていたものの、加齢、人口減、都心回帰、マンション建設の増加とマンション志向の高まりなどに伴って、段々と寂れている、そんな印象が強いと思います。確かに芝園団地でも日本人住民は減り続けており、団地併設の小中学校もここ十年ほどで閉校してしまいました。しかし、代わりに中国人のファミリー層が大挙して入ってきています。
URは、高齢化が進む各地の団地で「団地再生事業」を行っています。部屋をリノベーションするなどして、若い世代を呼び込もうとしているのがうかがえます。ですが芝園団地では、いわば何の苦労もなく、若い世代が入居しています。客観的に見れば「かつての賑わいを取り戻した」ともいえるのではないでしょうか?
彼らは子供を団地内の保育施設に通わせ、団地のスーパーで買い物し、休日は一家で団地内の飲食店に行ったり、広場で遊んだりしています(下の写真)。さらに、大規模な団地には必ず備わっている、広場、飲食店、保育施設などの施設を活用し、外国人住民同士の交流も持っています。話している言葉が違うだけで、ほとんど当初の想定通りの暮らし方をしているといえるのではないでしょうか。
ハワードの田園都市構想に端を発し、戦前の同潤会や住宅営団、戦後の日本住宅公団へと受け継がれてきた集合住宅団地建設においては、団地はただの住宅群ではなく一つの街であるという観点から、上述したようなコミュニティ施設が必ず付設されていました。現在でも、こういった施設の存在が、日本という異国で暮らす外国人住民の暮らしやすさにつながっているように見えます。
このように、コミュニティ形成を後押しする建造環境の潜在力とでもいうべきものが団地に備わっているのではないかという気がしています。もっとも、芝園団地では「若い外国人」「高齢の日本人」の間で分断があり、なかなか交流が進まないという現状があるわけですが、その解決のために活動する「芝園かけはしプロジェクト」の活動場所が団地の集会所であることも、団地のハード面でのメリットを生かした例といえるのではないでしょうか。
(文責:佐藤慧)
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