なぜ定住者の多さが重要なのか?
以上の結果をまとめると、愛知など東海地方の県、群馬県、東京都などで総人口に占める身分系資格者比率が高いことがわかりました。つまり、これらの都県では比較的長く滞在する外国人が多いということです。
集団間接触理論
今回、在留外国人の滞在年数の長さに着目して都道府県を類型化しましたが、ここからどのようなことが示唆されるでしょうか。
社会学の研究では、集団間接触理論という理論が知られています。これは、自分が属しているのとは異なる集団の構成員と定期的に接触していると、排外的な態度や思考が見られなくなっていくという理論です。
この理論は日本人の排外主義についても当てはまるといわれています。日本人の外国人との定期的な接触が排外主義を低下させるという結果が報告されています。この理論の詳細と日本を対象とした先行研究については、五十嵐(2019)が詳しいです。
ただし、先行研究の多くは、接触の指標として単に当該地域の外国人比率を用いています。しかし、今回算出した地域別の総人口に占める身分系資格所持者比率を用いたら、結果が変わることが考えられます。
つまり、比較的長期間滞在する身分系資格所持者は日本人住民と顔見知りになる機会も多く、また頻繁に接触すると考えられるので、外国人比率が同程度の地域間でも、身分系資格所持者比率がより高いほど排外主義がより低下するという関係が存在するのではないかと考えられます。
もしこの仮説が正しいとすれば、今回調べた、地域別の総人口に占める身分系資格所持者比率は、排外主義の要因の探究において意味を持つ変数といえるでしょう。
参考文献
五十嵐彰, 2019, 「排外主義: 外国人増加はその源泉となるか」田辺俊介編著『日本人は右傾化したのか』勁草書房, pp.94-114.
(文責:佐藤慧)
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